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Sledgehammer 18

何の意味もない話 リハビリ用
彼らのバンドはギターが二人(時々片方がベースに回ることもあるけど)とドラムのあわせて3人だ。

彼らの音楽は、難解な言葉と、難解なメロディで作られている。
だが、断片的にはとても難しいが、曲全体はとてもシンプルでわかりやすい。
曲調は…というと、深海の音楽のような時もあるし、日向のお花畑のような音楽の時もある。テクノっぽぃ時もあるし完全にロックをしているときもある。
てんでばらばら。
だけど、それもやっぱり大局からみれば…大きなうねりというか、流れがあって、あぁそうなのかって納得できる。
不思議だ。
とても。

 *

「で、今日はまともに見れるわけ?」
俺の隣で彼女がふくれっつらをして言った。

バンドのメンバーはかなり精神的なブレが大きい…つまり、情緒不安定…とまではいかないが、気分的にかなりムラがあるらしく、よくライブが直前になってそれが中止されることがままある。
完璧なときは、そりゃもうこれ以上はないってくらいにスゴイんだが、途中で演奏をやめたり、オリジナルを一曲も演奏しないこともある。
そのせいか、彼らは一部では猛烈に嫌われていて…、で、物好きな奴らからは熱狂的な支持を受けている。

そういうわけで…。
オススメのバンドだからぜひ…と彼女をライブに誘ってから今回で三回目だ。
前の二回は中止になってしまったから三度目の正直といったところか。
こんどこそちゃんとライブが行われればいいのだが…こればかりは確約できない。
「…多分」
力なく言った俺を彼女が睨んだ。
どうもライブの度に俺は株を下げているらしい。
どうしても聞かせたかったんだがと俺は内心ため息をついた。
「と、とにかくはいろうぜ。いい場所とらないと」
俺はあわてて彼女の手を引いた。

そしてライブが始まる。
時間になって袖から二人の男が出てきた時には少しほっとした。
だけど…三人目が出てこない。
ざわつく観客。
嫌な予感。
だが、メインヴォーカルの男は全くきにしていないようだ。
にっこりと微笑んで手を降って、女の子に黄色い声援を浴びている。
それをよそ目にもう一人の男は、ふところから何かを出してステージの上にチョコンと置いた。
「なんだ?あれ」
「ピラ…ミッド?」
「違う、あれ、メトロノームだよ」
そう言われて俺もようやく気づいた。
確かにそうだ。
あれはメトロノーム。分銅のついた針が左右に揺れ、それでリズムを取る道具だ。
だけど…なぜそんなものが?
「演出?」
「いや…」
こんなことは…と言いかけたとき、『えっと』ヴォーカルが言葉を発した。

『ドラムがバイトでこれないから、今日はこのメトロノームがドラムの代わりです』

「はっ?!」
「えー」
「なんだよそれ」
「そんなんでいいのかよ」
「っつか、バイトよりライブだろー!」
一瞬の沈黙の後、観客がざわつく。
慌てて彼女を伺うととても不快そうな顔をしていた。
「あー…」
フォローを入れようとすると…

『じゃぁ、やっぱり今日はやめます。出口で払い戻ししてもらってね』

二人はメトロノームを回収してさっさとステージを降りていった。
またも大きくざわつく観客。
「…さいってぇ」
馬鹿にしてんじゃないの?
最後の言葉は、バンドに…というよりも、俺に向かって言われたような気がした。
「あ、ちょ、ちょっとまって!」
器用に観客を避けながらさっさと歩く彼女を、俺は慌てて追いかけた。

これは…機嫌を取るのにずいぶんかかりそうだ…。

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