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Sledgehammer 12

何の意味もない話 リハビリ用
それはつまり、特に意味のない…いや音の調整みたいなもの。
湿気が強いからパキっとしない音を、どう宥めようか…なんて風に考えながらとにかく指を動かす。

例えば、重い湿気の海を半ば溺れながら進む小舟。
ギーコギーコと船体をきしませ、底にあいた穴からはこぽこぽと水が入ってきている。そんなイメージ。
その湿気の海がまたいただけない。
緑色で、粘ついてて、瘴気を放っている。
そんなイメージ。

ちっとも上手くいかない。

ステージの脇に座ってギターをかき鳴らしていると、誰かが横に座った。
いや、誰かじゃない。
セシルだ。
うちのヴォーカル兼ベース。

「ひどいなぁ」

あながちひとごとでもないくせに、そんなことを他人事にいう彼に腹が立つ。

「エッジに祭りの事を言ったんだ」
「あぁ」
「そんなに覚えられるかって怒ってた」
「だろうな」
「リズムだけ刻んでればいいって言ったんだけど、えらくご不満のご様子」
「で?」
「箸巻き作らなきゃいけないからパスって」
「箸巻き?」
顔を上げると、セシルはうんと頷く。
彼は大きな飴でも咥えているのか、頬がおかしな具合に膨らんでいた。
「そう、お好み焼きもどきが端に巻き付いてるやつ。主に祭りの屋台に出る」
「知ってる」
コロリと音がした。
「バイトでやることになったんだって。だから無理だって」
「はぁ?」
「どうしてもっていうならやるけど、本当にリズムとるしか出来ないって」
「やる気ないな」
それくらいならメトロノームでも出来る。
「ないね」
「お前も?」
「僕は箸巻きが気になる」
またなんとなくムッとして、セシルの膨らんだ頬を指でグニッと押すと、大きな飴が反対側に移動した。
「なに。カインだってカビの生えた音だしてたくせに」
「言ったな?」
「言ったよ」
割と喧嘩腰な言葉だったが、基本的にどちらもヤル気が決定的に欠けている。
「やめよう。体力の無駄だ」
「そうだね」
「で、どうするんだ?出るのか?やめるのか?」
「とりあえず…」
「とりあえず…」

保留

俺の言葉にセシルはコロコロと飴を転がし、「じゃ、おつかれさん」とさっさと帰っていった。

本当にヤル気がない。

それもこれも暑さのせいだ。

多分、きっと、そういうことにしておく。

俺はセシルのことを早々に頭から追いだすと、なんとかあっぷあっぷになって溺れている音を救い上げようとギターを抱え直した。

ほんとダルダルな感じでリハビリできてるんだろうか。

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