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Sledgehammer 07

何の意味もない話
彼の世界は極彩色に彩られていた。
極彩色の意味が分からないなら原色でもいい。それがわからないなら、小学校の頃に使っていただろう12色の絵の具の色でもいい。
つまり、赤!とか、青!とか、色の最後にビックリマークがつくようなはっきりとした色のことだ。
それはもちろん白と黒のモノクロの世界に生きている人々よりもずっとずっと幸せで、また彼自身とても自分の事を幸福であると感じていた。
誰からも楽しそうだとか、お前といると楽しいとか言われるし、悩みなんてなんにもなくて、真夏の晴れ渡った青空のようだと称される自分を自慢にすらしていた。
そんな彼は、しかし、だからこそ、他の色を知らなかった。
淡いピンクとか、薄い紫とか、レモンイエローとか、若葉色とか…そんな淡い色の事を彼は知らなかった。
繊細で、複雑で、柔らかくて、透明感のある色が存在するなんて知らなかった。

一目で分かる『取扱注意』なセシルと、人の好き嫌いが激しそうなカイン。
二人は、彼にとって初めて付き合うタイプの人間で、つまり、彼らこそがエッジにとって初めて出会う色でもあった。
顔をあわせてまもない頃、話しかけてくるのは大抵カインだったが、実はカインはまだエッジにたいして壁を張っていて、どちらかというとエッジとの距離をとっていたセシルの方がエッジの事を受け入れていた。
セシルは自由気まま、奔放でマイペース。カインもまたマイペースだが、一本筋が通っていて、彼らは似ているようで似ていない。
セシルはカインにたいして憧れに近いものを感じていて、そしてカインの方はセシルにコンプレックスに近いものを感じているような気がする。
合うようで合わない。違うようで違わない。
妙な二人組は、エッジにとってはじめて見る種類の人間で、普通の人なら彼らの間に漂う親しいが…しかしどこか緊張感のある雰囲気に彼らに近づくことを躊躇するのだが、エッジは無邪気に彼らの中に飛び込んでいった。
そして、気ままに彼らのスペースを歩きまわって、ちゃっかり自分の位置を見つけてしまった。

「お前が来て、よかったのかもな」

カインにそう言われたエッジは、マンガから顔を上げ「え?」と言った。
「何か言ったか?」
「だから、お前が来てよかったって」
「なんで?ドラムが足りなかったから?」
「それもあるけど・・・」

セシルとカイン。
二人だけの時は不安定だった。
だけれども、そこにエッジという第三者が入り込み、彼らはとても安定した。
音楽的にも幅が出てきたということもあるが、一番顕著なのはセシルが精神面で少し落ち着いたということだ。
セシルはちょっと精神的に弱いというか、ブレ幅が大きいところがあって、躁うつ病のような所があったのだが、エッジが来ることによってその症状が少し和らいだ。

しかし、カインはそれを口にするのは癪だった。

「…セシルが死なずにすんだ」
だからそう、違うことを口にした。
するとエッジは眉を動かし、「あー、あれね」と笑う。
「驚いた。セシルの家にいったら、あいつなんか錠剤一杯目の前に並べてたんだものな」
「あいつは危なっかしいからな」
「そうだな」
それで会話は終わったと思ったのか、エッジはまたマンガ雑誌に目を戻す。
カインはそんなエッジを見ながら、少しだけ彼が羨ましくなった。
自殺未遂…とまではいかないが、時々危なっかしい事をやってくれるセシル。
そのセシルに対し、セシルは叱ることはできるが、エッジのように笑って気分を軽くさせてくれることは出来ない。
役割が違うといえば、それまでだが…近頃精神が少し安定しているセシルを見ていると、少しだけエッジが羨ましかった。

「あ、そういえば」
「ん?」
「こないだ俺がお前と二人で夕飯食いにいったんだって言ったら、セシルのやつスゲーすねてたぞ」
ガキみたいにほっぺた膨らませて。
「それからその日は一日口聞いてくれねぇの。参った」
「あいつはガキだからな」
「そうだな。って…こうして二人でぼけーっとしてるのを知られたら、また怒られるかな」
「かもな。」
「あー…んじゃ、セシルの家に行くか?」
「いや、あいつはこの時間は…」
「バイトか」
エッジは時計を見て、「なんだ、あと20分くらいで終わりじゃないか」と言うと、読んでいた本をパタンととじた。そして、「迎えにいこうぜ」とカインを誘った。
「迎えに?」
「そう。こないだ二人でいった中華屋。セシルも行きたがってるとおもうんだよな」
「…あぁ」
カインの返事が一拍遅れたのは、エッジが自然にやってのけたセシルへの気遣いに驚いたからだ。
「どうかしたか?」
「いや、なんでも」
またもコンプレックスを刺激された気分になったカインは、エッジからフイと視線を逸らした。

これまでの友人たちには見られない反応。
面白いやつらだなぁ・・・と、カインやセシルの心情なんて全く読めないエッジはなんとも気楽に思った。

自分的リハビリ中

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