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Sledgehammer 05

何の意味もない話
映画が見たいと言い出したのはセシルだった。
カインは良い顔をしなかった。というのも、映画を見るにはお金がいるからだ。
だが、セシルは日頃の我儘をはっきし是非ともいきたいのだと騒ぐので、仕方なく折れた。

そして、どうせだからと新しいメンバーのエッジも誘い、向かったのは老舗の映画館・・・いや、映画館というよりは活動写真館と言った方がしっくりくるような、こじんまりとした映画館だ。
最新映画なんて上映しているわけもなく・・・本日の上映リストに挙げられているのはモノクロフィルムと、ピンク映画だった。
彼らが映画館についたときは、ちょうど古い映画の方が上演される所だった。(もしピンク映画が上映される所だったとしても、彼らはそのまま入っていっただろう)

スクリーンも小さければ、座席数も少ない。
彼らの他に客はふたりっきり。
一人は後ろの端に座った酔っ払いで、もう一人は、中央付近で横になっているくたびれたサラリーマンだ。
彼らは眠ったサラリーマンの2列前に座った。
中央にセシルを挟んで、右にひとつあけてエッジ。左にひとつあけてカインだ。
映画は、マレーネ・ディートリッヒの出世作、モロッコだった。
1931年の作品。
三人のだれもこの映画をしらなかった。
そしてマレーネ・ディートリッヒも、ゲイリー・クーパーもしらなかった。
当時は斬新なスタイルの映画だったのだろうが、現代の派手な映画に慣れている彼らにとっては、展開はスローで、どうにもパッとしないように感じられた。

映画を観る三人の反応はそれぞれ全くちがったものだった。
カインはマレーネ・ディートリッヒの美しい姿に、見惚れたように身を乗り出し字幕を目で追っている。
エッジははじめのころこそマレーネ・ディートリッヒに見惚れていたが、そのうち眠そうな顔をして、今はうつらうつらと船を漕いでいる。
そして最後の一人、彼らに左右を挟まれたセシルは、自分から映画を見に行こうと言ったにもかかわらず、ひどく不機嫌な顔をしていた。

セシルはいわゆる“芸術家肌”というか、気まぐれで、気難しいところがある。
何か気にかかることがあると寝食を忘れて没頭するし、何か気に触ることがあるとすぐに不機嫌になる。

不機嫌だったセシルは途中でふいと立ち上がると、そのままカインの前を横切って何も言わずに出ていってしまった。
カインは振り返ってセシルを見送ったが、小さく肩をすくめただけで追いかけることはしなかった。
先程もいったように、セシルは気まぐれなのだ。こういったことは特に珍しいことではない。
セシルがいなくなったことで、カインとエッジとの間には誰もいなくなり、そして空席が三つになった。
エッジはとうとう眠りに沈んだらしく、椅子に浅くかけて寝息をたてている。

スクリーンでは真白な肌をしたディートリッヒが、相手役のゲイリー・クーパーを熱く見つめている。
最初は退屈だと思っていた映画だったが、カインはだんだん面白さがわかってきた。

売店などない映画館。
わざわざ外の自販機で買ってきたコーラの蓋をあけ、口に流し込む。
すると、埃っぽい空気も相まって、カインは過去にタイムスリップでもしてしまったような気分になった。
意味もなく胸がドキドキした。
セシルにその事を言ったら、きっと彼はうらやましがって、また映画に行こうと言い出すだろう。

自分的リハビリ中

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