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暗黒騎士 14

読み返してないのでゴメン
暗黒騎士にジンという名の男が居る。
祖先はエブラーナにいたらしく、名の由来を“神”なのだといっていた。
しかし本当かと聞くと、彼は“塵”のことだとか“臣”のことだとかその時々によって代わっていて本人も本当の名の由来は知らないのではないかと思う。
その彼は貴族の子息のような薄い金髪の巻き毛とエメラルド色をした目をもっていた。
顔も柔和でとても人殺しなんかできるような顔には見えない。
しかし・・・いくら外見が虫も殺さぬような白馬の王子様だったとしても、彼は暗黒騎士だ。
彼は仮面の下に女を口説くときよりも優しい笑顔を浮かべて、人を斬る。

そのジンがふらりとセシルの部屋を訪ねてきたのは、夜半をとうに過ぎたあたりのことだった。
デスクワークをこなしていたセシルは、アルコールの臭いをさせた部下に小さく笑った。
「ご機嫌だね。ジン」
「そうですよ。とても、機嫌がいいのです。」
ジンはそういって片手にぶら下げた酒瓶を振ってみせる。
まだたっぷりと入ったそれに眉を潜めるセシル。
ジンは気付かぬ振りをして勝手に飾り棚からグラスを二つ取り出すと、書類の上に無造作に置いた。
「ジン・・・」
「いいじゃないですか。ちょっとくらい。部下の酒に付き合ってくださいよ」
「ちょっとならいいけどね。君はザルだって聞いてるから・・・」
「ザルですよ」
琥珀の液体をグラスに注ぎながら言う。
「普段はね。でも、団長となら酔えるから」
「?どういう意味・・・?」
言葉の意味を掴みかねて尋ねると、彼はおかしそうにクククと笑い「緊張感の問題です」と言った。それでも良く分からなくて、セシルはもう一度口を開きかけたが、思いなおして広げたままだった書類に手を伸ばし片付け始めた。
「んっ!んまいですよ、団長。さっすがシドさんの秘蔵の酒」
「し・・シドってまさか飛空艇技師のシド?」
「他にシドさんっていましたっけ?」
「・・・・知らないけど・・・でも、ほんとに・・・?」
「えぇ、本当です。整備用の油が置いてるとこに隠してあるの知ってました?」
言いながらセシルにグラスを勧めるのは、共犯に引き込もうとしているからだろう。
セシルはしばらく迷った末にそれを手に取った。

「今期の応募なんですけど、副官から聞きました?」
しばらく雑談を交わした後にジンが持ち出してきた話題は、今期の暗黒騎士になるための試験の受験者のことだった。
セシルはそれにドキッとしながら、あぁ、とか、まぁ・・・とか適当な言葉を返した。
「キレの悪い言葉。やっぱり気にしてるんですか?」
言いながら、彼は懐から一枚の紙を抜き出すとテーブルの上に放った。
黄味を帯びた紙にはエンリのものだと分かる柔らかな文字で、10人ほどの名前が書いてある。
今期の応募者だ。
例年より若干人数が少ないが、毎年これくらいの数の応募がある。
そして、正規採用されるのは2人から3人といったところ。
ジンはグラスを置いて、指で紙をなぞり一つの名前でピタリとそれをとめた。

ウルシラ

書かれている文字を読んでセシルが苦く笑った。
戦災に投げ出された子どもは、誰であれ“王の子”としてバロン王の庇護の下、生活を保障されて生きる事が出来る。
ウルシラもその一人だった。
ウルシラは今はバロンに併呑されてしまった国の第二王子だった。
セシルはウルシラを思い浮かべてなんともいえないため息をついた。
彼の国を滅ぼしたのはバロンだ。
それも実質的には暗黒騎士団。
更に言えば、彼の兄を切ったのはセシルだった。

ウルシラがどういう気持ちで暗黒騎士団に入団を希望したのかは知らない。

「どうかしました?団長」
「え?」
「暗くならないでくださいよ。酒がまずくなる」
演技めかして舌打ちをするジンにセシルは小さく笑った。
「ゴメン。でも、やっぱりちょっと気になるよね。彼、まだ14じゃなかったっけ?」
「えぇ、そうです。今期の応募の中じゃぁ最年少ですね」
「ちょっと早いんじゃないかなぁ~」
セシルの言葉にジンは小さく笑って、そんなことは自分の知ったことではないという。
「でもね。俺は結構いけるんじゃないかと思ってるんです」
「どうして・・?」
「暗黒騎士向きじゃないですか。国を負われ、父を殺され、母を殺され、兄を目の前で殺される」
ジンの言葉に非難のニュアンスは一切含まれていない。
それでも、セシルはズキリと胸が痛むのを感じた。
「とても暗黒騎士向きですよ。それに、暗黒騎士のボスはセシルさんなんだから」
「恨みの対象に顎で使われるわけか」
「そうです。憎しみも倍増ってもんです。負の気配が強くなる。」
いい暗黒騎士になれますよ。
彼は言って、体を反るようにしてグラスを飲み干し、バタリと机に半身を倒れさせた。
「おい・・・本当に酔ったのか?」
「えぇ、ベロベロです。」
「だけど、ジン・・・君はザルだって・・・」
「えぇ。でも言いましたよね。団長の前だったら酔えるって。そういうやつ、暗黒騎士団のやつらには多いと思いますよ」
「・・・?」
「だから・・・あんたの前だったら、酔えるってことですよ・・・わかりますか?」
「えっと・・・・?」
「・・・団長・・・時々にぶす・・ぎます・・よ」
最後の方の言葉は途切れ途切れで、一段とジンの姿が沈み込んだと思ったときにはスゥスゥという寝息が聞こえてきた。
静かに名前を読んでも全く反応しないジンにセシルは小さく肩をすくめ、それから彼が半分敷いていた紙をゆっくりと引き出してウルシラの名を見つめた。

“死なないで兄様!お願い目をあけて!!!お願いだよ!兄様!!!”

あの時の悲痛な声がリアルに再現される。
セシルは両手で額を抱えると眉根をよせ目を閉じた。

もうちょっと因縁をかいてもいいかなっておもった。

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