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暗黒騎士 05

一緒に飲まないか?
カインの誘いを、僕は苦笑して断る。
「ごめん。今日は彼らの世話をしなきゃいけないから」
言って肩越しに、暗黒騎士の詰め所を見る。
わずかにオレンジの光が漏れる石造りの建物。
顔を戻すと、全てを了解したカインは断られたことに不満の色を見せず微笑んで頷いた。
「あぁ。そうか。」
祭りの日、外に出ることが許されない彼らのため。
「お前も大変だな」
カインの言葉にクスリと笑う。
そんなことないよ。
そういいたいけれど、外にいる人たちにはその言葉はなかなか通じない。
だから、僕はただ微笑む。
外の人には分からない。
彼らがとても純粋で、とてもいい奴らなのだということを。
「じゃぁ、そろそろ行かないと。」
「あぁ、また誘う」
カインの言葉に、手を上げ僕は背を向けた。

扉を開けると、彼らは一斉に僕を見る。
いつもは全身を重装備に包んだ彼らが、今だけは兜を外し、鎧も雑兵がつけるような軽いもの。もちろん、剣を傍から放すことはないけれど。
兜を外した彼らの顔は誰もが若い。
暗黒騎士は長くは勤められないし、長く生きることも無い。
負の力は強大で、すこしずつ体を蝕み、命を食らう。
構えた愛剣を片手で支えることが困難になったとき、彼らは進んで命を投げ出す。
戦いの中で、その命を燃やし、焦げる闘争を己の剣に託す。
暗黒騎士の命に鍛えられた剣は、より強く、禍々しく、闇を深くする。
「団長!遅かったじゃないですか!」
一番に声をかけてきたのは、僕の片腕であるエンリ。
僕より年上である彼は、とても頼りになる副官だが、笑うと僕よりも幼く見える。
「あぁ、ごめん」
「もう皆待ちくたびれてますよ。」
「うん」
話している間も、有能な彼は傍にいた騎士にグラスを取らせ、自ら酒を注いで僕に渡す。
低いテーブル、溢れるようなご馳走。床にじかに座った彼らは、僕がグラスを取ったのをみてならうようにグラスを持ち、姿勢を正して僕を見る。
その気配を察し、エンリもまたテーブルに座ると、たっているのは僕だけになった。
「えぇ・・・っと。」
一斉に注目を浴び、少し困ってしまった。
戦場に在り、陣頭に立っているときならば、言うべき言葉は自然に浮かぶものだが・・・こういった場所では、なかなか気のきいた言葉が浮かばない。
ちらりとエンリを見やると、何でもいいのだと小声で伝えてくる。
困った。そう苦笑し、考えをまとめ咳を一つして口を開く。
「今宵は、バロン建国の日。なれど我等は、闇に染まる身、なれば祭りの場に着くことは叶わぬ。
 故に、我等は建国を祝うことは許されぬ。なれば、我等は今宵の月に杯を傾けよう。」
彼らの視線を全て集め、彼らの滾る心の音を聞く。
僕の言葉一つ一つに彼らの鼓動が高くなるのが分かる。
彼らは、僕ではない。
しかし・・・彼ら一人一人を、僕は自分自身として感じ取る事が出来る。
彼らは、闇に身を落とした。
純粋たるがゆえに。
まっすぐに、まっすぐに、どこまでもまっすぐに貫く心。
強く、そして儚い心。
彼らに捧げるように、ゆっくり杯を前に出す。
「今宵、集った皆に。死んでいった彼らに。やがては死んでゆく我等に。そして月に。」
杯を高く掲げると、皆が乾杯の言葉を上げる。
杯を傾け、喉に熱い酒を流し込めば、燃えるような吐息が噴出す。
そして、誰からともなく上がる歓声。
「長くなりそうですね」
エンリの言葉に、僕は頷く。
きっと眠ることは出来ないだろう。
彼らは次々とやってきて、僕に酒を注ぎ、そしてたった一人の主人を見るような猟犬の目で僕を見るのだから。

カリスマ的な人気があればいい。

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