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竜騎士 10

つい先日のこと、士官候補生になるための試験が行われた。
筆記試験や実技試験、口頭での弁論試験など3日間みっちりと実施されたものだ。
カインもその試験には監督として参加しており、弁論試験においては何人もの受験者をたじたじにさせていた。

そのカインは、“今年の筆記試験は例年よりもずっと難しかった”という噂を聞いて、自分の部下とともに実際の試験と同じ環境、同じ時間でその試験に挑んでみた。
遊び感覚でやってきたのだが・・・確かにそれはかなり高度な問題で、じきに彼らは真剣にそれに取り込む必要があることに気付かされた。
基礎をきっちりわかってないと、どれも解けない問題。
たとえば、敵と川を挟んで敵対しているときにA・B・C地点、どこを渡河したらいいか・・・という問題には、最適地を選ぶとともに、その理由と、選んだもの以外の欠点をあげることを求められている。
また、次の問題が、先程の渡河の問題に関するものであり・・・。つまり、1つを間違うと2つ3つは確実に失点してしまうというシビアなものだったのだ。
カインも二つほどの問題でひどく頭を悩ませた。
そして、3時間とられた試験時間をぎりぎりまで使って試験を終えたときには、カインも部下の面々もゲッソリとしていた。
しかし、ここで一つ問題がある。
選択式の問題なら簡単に採点出来るのだが、問題点や利点、善後策などを回答する問題については採点が難しい。むしろ、採点者の方がより多くの知識を必要とする問題だ。
せっかく3時間もかけたのに点数がわからないというのは嫌だ。しかし、まさか他の部隊に自分たちの試験を採点させるのもまた癪だ(というか、あまり高得点が期待できないからという方が大きい)。
そこで白羽の矢が立てられたのが、カインの親友にして暗黒騎士団の長であるセシル=ハーヴィだった。
彼ならば引き受けてくれそうだし、また仮に成績が振るわなかったとしても彼なら竜騎士のことをとやかく言わないからだ。
実際、セシルは快くそれを引き受けてくれたのだが・・・。ここで、ひとつのことが明らかになる。なんと、その問題を作ったのがセシルなのだという。ということは自動的に彼が採点者でもあったのである。

「ったく、意地の悪い問題ばかりつくりやがって」

とは、採点するセシルを前に不機嫌そうなカインの台詞だ。
彼はすでに採点の終えられた自分の解答用紙を見ている。その解答用紙に添えられた数字は190。最高点が200点に設定されている中190点だったのだが・・・カインは最高点を取れなかったことが不満らしい。
「そうかな?割と良心的だと思うけど」
「どこがだよ!どこが!」
カインが怒鳴るのにセシルは苦笑した。
「だって、一応挽回の余地が出るように配点プラス10まではあるんだよ?」
つまり10点を割り当てられている問題でも、それがとても良い回答であり採点者をうならせるようなものであれば+10点まで点が振り分けられる。
だが、その半面・・・
「マイナスも10だろうが!」
正解しても、説明がまずければ1点しかもらえないこともある。また間違った上に、とんでもない理論をぶちまけてしまえば-10点をされてしまう。
つまり今回の問題は、5点が5問、10点が2問、15点が1問、そして20点が2問の合計100点が通常の満点。それプラス1問につき10点までの配当があるから最高点が200点となる。
仮にすべてを間違ったとしても通常の試験ならば0点で済むが、今回はマイナスもつくので・・・最低点は-100点となってしまうのだ。
「大丈夫だって。今回の合格点は130点だからカインは余裕でクリアだし」
セシルの言葉に「はいはい、そーですか」とカインはつまらなそうに返した。
「で、お前は何点だったんだよ」
「あのね、これ僕が作った問題だって覚えてる?」
「あぁ・・・そうか」
なんだ、つまらんと口をとがらせるカイン。
「でも、エンリは170点だったよ。参考までに」
エンリとはセシルの副官の名前だ。それを聞いてカインは少し機嫌を持ち直した。
「そうか。エンリ先輩に勝てたならまぁいいか」
「ついでに最高点は、模擬で受けてもらったベイガン近衛隊長」
「なるほどねぇ・・・・」
カインは気のない返事をする。ベイガン隊長に負ける分にはそれほど悔しくはないらしい。
「はは、でもねぇ。僕は本当は200超えが出てもいいんじゃないかなぁと思ったんだよね」
「200超え?」
「そうそう、僕の度肝を抜くような大胆な回答をしてくれるひと」
「該当者無しか」
「そうだね。まぁすべて予想の範囲内だったね」
少し残念そうなセシルにカインはうなずき、採点の終わった用紙の中から一枚引き抜いた。
それはカインの副官であるサッズのもので点数は170点。エンリと同点だ。副官同士仲がいいことで・・・とカインは思ったが、実際には彼ら二人はそれほど仲は良くない。
もう一枚めくると・・・
「ひどいな。こりゃ」
カインの部下の一人。点数は50点・・・。
「こいつ・・・」
あとで締めてやる・・・っと物騒なことを言うカインにセシルは呆れた。
「それより、カイン。」
「ん?」
「君、自分の反省をした方がいいと思うよ」
セシルの言葉に、カインは言葉に詰まった。
というのも、彼の減点箇所は2つだったのだが、一つは“最適なものを選べ”を“最悪のものを選べ”と勘違いして回答し、もう一つは、A地点とB地点“どちらが不利か”を“どちらが有利か”と勘違いしたものだ。
つまり、完全なケアレスミスである。
「これが無かったら満点だったのにね」
残念。
セシルに言われてカイン悔しそうに唇を尖らせそっぽを向いた。

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