スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

竜騎士 2

「こんなことはこれまでにも・・・?」
「いや、始めてだ。大体、孵る時期が早すぎる・・・。俺がコイツを見つけたのは本当に偶然だったんだ」
本来の産卵時期にははまだ数ヶ月あるというカイン。
「他の人たちには?」
僕の言葉に、カインは黙って首を横に振った。
「言えるわけがない・・・か」
「あぁ・・・」
キュィキュィと甘えたように無く小さな命。
一つの体に二つの鎌首。四つの目は鮮血のように赤く濡れている。
あけた口からは小指の先ほどの小さな牙が覗き、背にはもうしわけ程度の翼。
とても可愛らしいが・・・しかし、そうも言っていられない。
カインはあやすように抱えた竜を揺すり顔を上げる。
「どうすればいいと思う・・・?」
苦りきった言葉。
僕は兜の中できつく唇を噛んだ。

 彼が何故、他の竜騎士に相談しなかったか。
 引退した青竜騎士団団長へ相談にいかなかったか。
 何故、暗黒騎士である自分に一番に相談したか。
 親友だから・・・という言葉だけでは足りない。
 ・・・多分無意識なのだろう。
 だから、怒ることはしない。

 自分は、彼の望むままの暗黒騎士なのだから。

僕は黙って手を出し、彼から竜を受け取った。
そして、ことさら乱暴に片腕に抱えなおす。
「セシル・・・?」
「始末してくるよ」
「始末?」
「うん。この事態は・・・誰にも知られちゃいけないような気がする。
 ただでさえ、近頃、魔物が増えて人々が不安になっているというのに・・まさか二首の竜が生まれたなんていえないよ」
「だが・・・」
「それに・・・分かっているだろう?カイン。近頃の陛下のご様子を。」
魔物が増えているせいか、あの優しかった王がまるで別人のようにカリカリして神経を張り詰めている。些細なことで臣下を怒鳴りつけ、眠れないのか目が血走っている。
地下牢には大した罪も犯していないものがわんさと詰め込まれ、城に詰めている人々は明日はわが身と怯えている。
そんな中に、この報告は持ってはいけない。
今の陛下の様子は普通ではないのだ。
「闇に葬るべきだよ」
そのつもりで僕に一番に声をかけたのだろう・・・とは流石にいえない。
カインのことだから、きっと僕に一番に相談したかっただけだろう。そして一緒に悩み、考え、一番いい方法を導きだそうとしたのだろう。
だけど・・・僕はそこまで素直で純粋にはなれない。
見えない兜の向こう、カインの目が揺れているのが手に取るように分かった。
いつもはとても頼りになって、僕よりもずっとずっとしっかりしているはずなのに、こういう時は何故か僕の方が年上のように感じてしまう。
性格上の違いもあるけれど、この場合は暗黒騎士と竜騎士の違いといった方が正しいかもしれない。カインには、こういうことは似合わない。
こういう・・・汚れ仕事は。
「大丈夫だよ。カイン。」
「大丈夫って・・・」
「僕が始末をつける。まさか、君が竜に手をかけるなんて出来ないだろう?」
「それは・・・」
「だから、僕が始末をつけるよ。大丈夫、誰にもばれないように始末するから」
僕の言葉にカインは一瞬間上げるように間を置き、やっぱり・・と言った。それを僕は首を振って否定する。
「ダメだよ。カイン。これは僕の仕事だ」
「セシルの仕事?」
「そう。暗黒騎士だよ?僕は。だけど君は、カインは違うだろう?
 君は、こんなことをしちゃいけない。そんなことをしたら、竜に乗れなくなる」
「・・・・」

竜は神聖な生き物だ。
故に、竜は暗黒騎士たちを背に乗せることを酷く嫌がる。
カインがもし竜殺しをしてしまったら、それは誰にも知られぬようにしたとしても・・・竜にはわかってしまうだろう。
そうしたら、彼はもう竜の背には乗れないかもしれない。
そんなことをさせるわけにはいかない。
彼は、竜に跨り、青空の中にあるべき人なのだ。
僕が堕ちてく分、昇っていってほしい。
手が届かなくてもいい・・・。
はるかな高みにあってほしい。

「セシル・・・」
「カイン、そんな顔をしないで」
といっても、見えるわけじゃないけれど・・・。
長い付き合い。
彼がどんな顔をしているかくらいわかる。
「これが僕の仕事だから。気にする必要はないよ。
 君には重い業でも、暗黒騎士の僕にとっては力となるんだ。だから、何も気にする必要はない。」
「だが、心に傷は残る。」
「・・・そういってくれるだけで十分だよ」
「セシル・・・」
「もう、これ以上は何も言わないで。」
「・・・・すまない・・・」
「謝ることはないって。じゃぁ、僕はこいつを連れて行くね」
「何処へ?」
「・・・僕たちの聖地へ」

暗黒騎士しか入ることの許されない、黒塗りの教会。
一般の人たちは何処にあるかすらも知らない、呪われた場所。
死霊が彷徨い、崩れ落ちた死体が息を吹き返す。毒の沼がごぼごぼと瘴気を噴出し、やせこけたカラスが腐肉を漁る。
そこならば・・・誰にも見つからない。
二度と甦らないようにいくつかの手順を踏まなければいけないだろうが・・・。

僕は安心させるように空いたほうの手を彼の肩に置く。
じっとこちらを見つめる気配。苦笑し、一歩を出て彼の兜に自分の額をコツリと当てた。

「行ってくる」
「・・・・あぁ」

あー・・・途中から暗黒騎士バージョンになってるし・・・
次はリベンジしようと思う。
セシルを出さなきゃいいのかな・・・。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。